弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Surgical and Interventional Treatment of Valvular Haert Disease( JCS 2012)
クラスⅡb
1 AVRのリスクが高い血行動態的に不安定な患者にお
いて,AVRを前提としたブリッジの役割としての
PTAC
2 重大な病的状況を合併している患者における一時し
のぎとしてのPTAC
クラスⅢ
1 AVRに対する代替
2 成人ASに対するPTACの適応基準と判断のポイント
 若年者ASと成人ASではPTACの有効性が異なるため,先天性ASに対しては別に適応が定められなければならない.成人ASで弁の石灰化が高度な例では,第一
選択の治療法はAVR である.成人ASでのPTACは,僧帽弁狭窄症(MS)に対する経皮的僧帽弁形成術(PTMC)とは異なり,術後早期から弁閉鎖不全や再狭窄などを生じ230),外科手術より長期予後は不良である.また,調査対象は異なるが,PTAC治療が行われなかったAS 症例の自然歴231)と比較しても1年生存率は同程度でしかなかった.

 以上のことより,成人の重症ASで待機的にAVRが実施可能な状況であればAVRが第一選択となる.しかし,高度ASで心原性ショックに陥った状況ではAVRの予
後は不良で,AVRよりも外科的侵襲度が低いという意味で救命処置としてのPTAC選択の余地が残される232).2008年のACC/AHAガイドライン229)でも成人のASに対するPTACについて,PTACはAVRの代替とはならないとしている.それでもPTACが選択される状況として,重症ASで難治性肺浮腫,または,心原性ショックの患者で,AVRの橋渡しとして,一時的に血行動態を改善させる目的などが挙げられている233)

 ACC/AHAガイドライン229)の成人AS患者におけるPTACの適応についての表を引用する(表28).なお近年,イノウエバルーンの使用や高頻度ペーシングなどを用いることにより,以前よりもPTACの成績が向上してきているという234)
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表28 成人大動脈弁狭窄症患者に対するPTAC の推奨1)
Ⅱ 大動脈弁疾患 > 2 大動脈弁狭窄症に対するPTACの適応 > 2 成人ASに対するPTACの適応基準と判断のポイント