弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Surgical and Interventional Treatment of Valvular Haert Disease( JCS 2012)
4 手術成績と予後
 大動脈弁,僧帽弁の両弁置換術の病院死亡率は,従来5~ 19% 325)-328)と報告されてきたが,近年では単弁置換術と比べてもさほど高くはなくなった329)との報告もある.日本胸部外科学会の2009年の全国集計では,AVR,MVR各単独の病院死亡率が各々3.5% , 5.3%であるのに対して,AVR+MVRの病院死亡率は7.9%となっている.一方,米国のSociety for Thoracic Surgeons(STS)のデータベースによると,2010年のAVR+MVRの30日死亡率は9.0%台であった142).一方,術前60 mmHg以上の肺高血圧合併例では病院死亡が38.5% 330)に及んだとする報告もあり,困難な症例も多い.術後の合併症としては単弁疾患術後と同様に血栓塞栓症,血栓症,感染性心内膜炎,Paravalvular leakなどがある.

 各合併症の発生率は,使用人工弁,施設,人種,などによる分散も認められる291),331)-342)が,一般に単弁置換に比し二弁置換施行例で高率とされている.例えば,血栓塞栓症の発生率は,20歳以下の若年者二弁置換症例の20年間follow-upの報告では1.01% /patient-year343)となっており,MVRのみの0.5%344)の約2倍となっている.長期生存率ではactuarial survival rate として5,10,20,24年目それぞれで90.4%,85.6%,84.4%,82.4%との報告329)がある.
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Ⅳ 連合弁膜症 > 2 連合弁膜症に対する手術適応,術式とその選択 > 4 手術成績と予後