① OMC Sellors分類によるOMC347 例の遠隔成績の検討42)では,術後14年の非再手術率がⅠ型で73.5%,Ⅱ型で88.9%,Ⅲ型で84.0%と各群で有意差を認めず,石灰化や弁下部病変を認めるMSに対してもOMCにより比較的良好な中期遠隔成績が得られたと報告されている.長期追跡調査が施行されている最新の報告43)でも10年,20年,30年の再手術回避率は88.5%,80.3%,78.7%と良好な結果が示されている.一般に遠隔死亡に関連する因子として,高年齢,高肺血管抵抗および弁尖石灰化が,血栓塞栓症に関連する因子では,塞栓症既往歴,弁尖石灰化および可動性の低下が指摘されている44).また,再手術に関連する因子としては,術前弁口面積,弁尖石灰化ならびに可動性,僧帽弁逆流が報告されている.
② MVR MVR後,人工弁が正常に機能している限り僧帽弁の狭窄は解除され,肺循環を含めた血行動態が改善し自覚症状も軽減される.MVRの遠隔成績は,人工弁の耐久性や人工弁関連の合併症,抗凝固療法のコントロール,肺高血圧・左房拡大・心房細動・右心不全といったMS関連の血行動態異常,等に影響されるが,通常,適切な抗凝固療法や外来follow-upが行われていれば悪くはない.MVR術後の生存率に影響する遠隔期の合併症として,脳梗塞,心筋梗塞,全身血栓塞栓症,血栓弁,脳出血,消化管出血,人工弁感染性心内膜炎,不整脈ならびに心不全などがある.