弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Surgical and Interventional Treatment of Valvular Haert Disease( JCS 2012)
5 慢性心房細動とMaze 手術
CoxらによるMaze手術の開発
163)
以降,特に我が国では慢性心房細動を合併する弁膜症に対して積極的にMaze手術を行って洞調律に回復させようとする試みが
なされてきた
164)
.僧帽弁形成術や人工弁置換術を行う際にMaze手術を併施することにより,術後脳梗塞の発生率低下が認められる
165)
.特に僧帽弁逆流症に対する弁形成術とMaze手術の同時手術は,術後遠隔期の脳梗塞発生率低下だけではなく,術後心機能を改善し生存率も上昇させる
166)
.2009年の日本胸部外科学会学術調査
36)
によると,病院死亡率は2.2%である.また適切な症例に施行すれば70~ 90%で心房細動を洞調律に復帰させる
167),168)
.
以上,慢性心房細動を有する僧帽弁膜症に対してMaze手術などを同時に行うことは推奨され,本学会の「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」でも「僧帽弁疾患に合併した心房細動で,弁形成術または人工弁置換術を行う場合」はclassⅠと明記されるようになってきている
169)
.しかし,Maze手術がなされても洞調律に復帰しない症例が10~ 30%あり,左房径が大きくなると(>70mm)洞調律の復帰率がさらに悪くなる.前記のガイドライン上も「心房および心胸郭比の著明な拡大があり,手術を行っても洞調律復帰が困難,または洞調律に復帰しても有効な心房収縮が得難い場合」はclassⅢとされており,適応に関しては未だ議論の余地があり,今後の推移を見守る必要がある.
また,最初の“cut & sew”によるMaze手術の短所を補うべく,心房切開線の変更・簡略化,あるいは凍結凝固や高周波エネルギー等による切開線の代用などが行われてきた
169)-175)
が,いずれの切開線・使用エネルギーが妥当なものであるかは, 未だ結論はでていない
176)-178)
.
目次へ
Ⅰ 僧帽弁疾患
> 5 慢性心房細動とMaze 手術
目次
SiteMap
戻る