弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Surgical and Interventional Treatment of Valvular Haert Disease( JCS 2012)
クラスⅠ
1 上行大動脈最大径が5cm以上
2 上行大動脈最大径が4.5cm以上の二尖弁に伴う大動
脈弁疾患
3 上行大動脈径拡大速度が半年で0.5cm以上
クラスⅡa
1 ARが上行大動脈近位部の拡大に起因する場合・上
行大動脈最大径が4.0cm以上のMarfan症候群
2 上行大動脈最大径が4.0cm以上の二尖弁に伴う大動
脈弁疾患
4 大動脈弁手術時の上行大動脈瘤(拡大)に対する手術適応
(表38)
大動脈拡張に対する待機的手術に関しては,必ずしも明確な適応基準がある訳ではない.上行大動脈径が6cmを境に破裂の危険性が極めて高くなることを示した
上行大動脈瘤の予後調査
365)
や,大動脈弁置換術時の上行大動脈径が5cm以上では弁置換後に高率に大動脈解離を発生したとする研究
366)
を参考に,予防的大動脈切除術の適応が決定されている.すなわち上行大動脈の拡張に対する手術適応は,最大径5cmを目処に決定するのが一般的である.2010年の欧米のガイドラインでは5.0cmから4.5cmに引き下げている
367),368)
が,4.0~5.0cmの軽度拡大症例における予防的大動脈切除術の適応は近年の研究でも見解の一致を見ていない
369),370)
のが現状である.しかしここは欧米のガイドラインに準拠することとした.また,経時的な径の拡大速度は危険因子として考慮する必要があり
365),369),371)
,0.5cm以上/半年の経時的拡大を認める場合は手術適応となる
367),368),372),373)
.ARが大動脈近位部の拡大に起因する場合は,基部再建術が外科治療の根本的な意味を持ち5cm以下の大動脈径でも手術適応とされる. 特にMarfan症候群は破裂や解離を合併しやすく4.0~ 4.5cmでも合併手術が推奨され,また経時的な径の拡大速度も危険因子として考慮する必要がある
365),371)
.
体格を考慮して手術適応を判断すべきであるとして,胸部大動脈瘤全般において大動脈径(cm)/体表面積(m
2
)≧ 2.75(BSA 1.5cm
2
で大動脈径4.5cm),Marfan症候群と二尖弁の症例において大動脈断面積(cm
2
)/身長(m)>10(身長150cmで大動脈径4.4cm),に到達すると解離,破裂,死亡などの危険性が高くなり,手術適応とする補正式
374)-376)
も提唱されている.しかし,平均的に体格の小さな日本人を対象にした場合,欧米人対象の数値をそのまま適用してよいかについては検討が必要で,我が国でのエビデンスは確立していない.上行大動脈・基部の合併手術の適応判断に対しては,径の基準のほかに,患者の年齢,耐術能,施設の成績なども考慮することが必要である.また,大動脈径4.0cm以上で手術適応に満たない軽度拡大を認める場合には,エコー,MRI,CTの画像診断を年1回行い,定期的フォローアップする重要性も指摘されている
367),371)
.
表38 大動脈弁手術における上行大動脈拡張に対する合併手術の推奨
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Ⅴ その他
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3 上行大動脈拡張合併弁膜症患者の手術
> 4 大動脈弁手術時の上行大動脈瘤(拡大)に対する手術適応(表38)
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