① OMC OMCの要点は,弁口面積の回復をどこまで求めるかにあり,狭窄を呈した弁口を大きな逆流を残すことなく少しでも大きく開大できれば弁機能は術前よりも確実によくなり,臨床症状は著明に改善される.症例によってはOMC後の弁逆流発生が避けられないこともあり,その場合,遠隔成績に支障を来たす(表15).両弁尖の接合状態を向上させる工夫として,OMC時に電動ヤスリを用いて弁尖の肥厚・硬化部分を薄く柔軟にする方法32)も報告されているが,症例数が少なく十分な遠隔成績が 得られるには至っていない.一般にSellors分類(MS)のⅡ型で僧帽弁逆流が軽微かないものがOMCのいい適応となる.
② MVR 僧帽弁に著明な石灰化や線維化,高度な弁下部癒合を認める場合には,PTMCやOMCの成功する可能性が低くMVRの適応となる.またOMC後の再狭窄例なども MVRの適応となることが多い(表16).MVRでは,弁下組織温存術式が左室機能の温存に有利とされている33),34)が,MSでは病態上後尖およびその弁下組織の温存が困難なことが多く,また,その効果についてもMRと異なりMSでは必ずしも実証されていない35).弁膜に塊状の石灰化が残る場合は,その部分を脱石灰,切除する必要がある.また,弁膜が直接心筋と癒合し弁下組織が一塊となっている症例もあり,このような高度な弁下病変を伴う症例や弁輪に高度石灰化が及ぶ症例では左室破裂に留意すべきで,弁下組織や石灰の摘除に際して慎重な操作を要する. 2)年齢,病期,その他の患者背景による選択 MSに対する外科治療の適応において,年齢,病期などに一定の適応基準はない.高齢者や腎不全・肝不全など他臓器疾患を合併するハイリスク症例,手術適応 のある担癌患者または妊娠中のMS症例などに対しても,弁病変がPTMCに不適当であれば合併疾患を十分に検討した上でOMCやMVRを考慮する.また,心房細 動合併例で左房内血栓や血栓塞栓症の既往がある場合には,MSによる症状の有無にかかわらず手術の可能性を検討すべきである.