弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Surgical and Interventional Treatment of Valvular Haert Disease( JCS 2012)
2 外科治療法の種類と選択
MRに対する外科治療としては現在,(1)僧帽弁形成術,(2)僧帽弁の腱索を温存するか,腱索を再建して乳頭筋と弁輪の連続性を維持する僧帽弁置換術
(MVR),(3)僧帽弁を完全切除するMVR,がある.それぞれの長所と短所を以下に概観する.
①僧帽弁形成術
僧帽弁形成術は自己の固有の弁が温存される.したがって人工弁による置換術に比して,長期間の抗凝固療法やその他の人工弁に関連した遠隔期の合併症(弁機能不全,人工弁感染症など)のリスクを回避できる.さらに僧帽弁を温存することによって,それを切除する場合と比較して左室機能が良好であり,術後遠隔期の生存率が良好となる
55),56)
.したがって,僧帽弁の形成術が可能である場合はこれが第一選択となる.しかしながら僧帽弁形成術は技術的に困難な場合がある.特に弁の硬化や弁輪の石灰化,リウマチ性の病変では僧帽弁の形成術が成功する可能性が低くなる.
② 僧帽弁の後尖を温存したり,腱索を再建して乳頭筋と弁輪の連続性を維持するMVR
これらの術式は僧帽弁の機能が置換された人工弁によって確実に得られるだけでなく,遠隔期の左室の拡大予防が期待でき,乳頭筋と弁輪との連続性を温存しない術式に比べて術後の遠隔期生存率が良好である
57)-59)
.一方,人工弁を使用することに伴う,短期および長期の合併症が機械弁,生体弁ともにそれぞれ存在する.
③僧帽弁を完全切除するMVR
僧帽弁前・後尖を完全に切除して,MVRを行う必要のある症例は,弁の破壊が高度である症例,弁下の腱索の肥厚癒合や石灰化が高度で弁および腱索の完全な切除が望ましい症例である.しかしこのような症例でも人工腱索を作製し弁輪と乳頭筋の連続性を可及的に再建することが推奨されている.
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