弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Surgical and Interventional Treatment of Valvular Haert Disease( JCS 2012)
1 術前の左室機能
2 術前のNYHA心機能分類
3 心房細動
4 冠動脈疾患合併
5 心筋症合併
6 手術術式(弁下組織非温存MVR vs弁下組織温存MVR vs
形成術)
著者,施設,掲載雑誌,発表年度患者数再手術回避
率術後1年5年10年15年20年
Moth D, Schaff V 679 93 89 84
Mayo Clinic 428(P) 96 92 89
Circulation, 2011 251( A) 89 82 72
Gillinov AM 2902 97 93 89
Cleveland clinic 2650(P) 98 95 94
Ann Thorac Surg, 2008 252(A) 97 93 88
Braunberger E, Carpentier A 162; IE16含む
HEGP and Broussai's Hospital 93(P) 98.5 96.9
Circulation, 2001 28(A) 86.2 86.2
31(B) 88.1 82.6
David T 606 98.6 94.7 90.2(18y)
Toronto General Hospital 179(P) 100 98 97(18y)
J Thorac Cardiovasc Surg, 2012 106(A) 95 88 71(18y)
321(B) 99 95 95(18y)
Eishi K, Kawazoe K,国立循環器病研究センター127 89 81.1
J Heart Valve Disease, 1994
Kawazoe K,聖路加国際病院八一卜センター506 93(12年)**
Okada Y 191 97
神戸市立医療センター中央市民病院179(P) 97
J Thorac Cardiovasc Surg, 2012 321(B) 97
Kasegawa H 517 74.5(14年)
榊原記念病院517 94.2* 82.8* 77.5(14年)*
J Heart Valve Disease, 2008 239(P) 98.4(14年)*
115(A) 68.6(14年)*
Miura T, Eishi K 116 95.3(3年) 91.0(7年)
長崎大学67(P) 95.3(7年)
Gen Throac Cardiovasc Surg, 2009 19(A) 93.3(3年)
23(B) 95.5(4年)
4 手術成績と予後
僧帽弁形成術の優れた成績を根拠に,対象とする疾患および病変が拡大され,適応がより早期に判断されるようになっている.その結果,MRに対する弁形成術の施行数は徐々に増加している.日本胸部外科学会の2009年の学術調査では,単独僧帽弁手術の 62.1%(2568/4135例)に形成術が行われたことが報告されている36).また病院死亡率は1.9%と,弁置換術の5.3%に比し明らかに低いことも知られている.北米における2010年の成績にも,単独僧帽弁形成術の手術死亡率(術後30日以内死亡)が2%以下, 弁置換術では5%以上と差があるとしている142).しかし同じ報告の中で36),142),弁形成術とCABGの同時手術の死亡率は5%と報告され,75歳以上の高齢とともにCABG合併患者の僧帽弁の手術危険率が高いことがわかる.
弁形成術の遠隔成績は安定しており,再手術の頻度は弁置換術と変わらず10年で7~10%である.僧帽弁逸脱症による僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成術の国内外の遠隔期再手術回避率を表19に示す79),81),82),85),143)-146).MRに対する手術の予後を術前のLVEFで検討した409例の検討では,術前のLVEF 60% 以上,50~ 60%,50%以下でそれぞれ10年生存率が72%,53%,および32%であった56).MVRと形成術の予後を術前の因子を多変量解析で訂正した検討では,僧帽弁形成術の予後がMVR術後と比較して多変量解析後も有意に良好であるという結果が報告されている56)が,虚血性MRに対する形成術とMVRの短期,遠隔期予後の比較には議論の余地がある137),147)-149).(表20)
表20 予後に影響を与える術前因子
表19 僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逸脱症)の遠隔期再手術回避率の比較
P:後尖病変,A:前尖病変,B:両尖病変,*はsevere MR回避率,**は2011年度,第111回日本外科学会定期学術集会抄録より引用