弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Surgical and Interventional Treatment of Valvular Haert Disease( JCS 2012)
3 上行大動脈拡張(瘤)手術時の大動脈弁疾患に対する手術適応
 大動脈弁疾患の手術適応は,ほぼ見解の一致をみている.上行大動脈拡張との成因において,因果関係のない大動脈弁疾患に対しては,同時手術の適応をCABG時に併設する場合と同様に考えてよい.しかし,実際には上行大動脈拡張に合併する大動脈弁疾患は大動脈基部の拡張に続発するARが大多数を占め,大動脈弁に対する手術を大動脈病変から切り離して別個に扱うことはできない.このような症例にはBentall手術のような大動脈基部の再建を必要とするが,その際ARの重症度にかかわらず大動脈弁を含めて再建の対象とされてきた.近年行われるようになってきた自己弁温存大動脈基部置換術は,弁破壊を伴わないARに対して大動脈弁を温存して基部再建を行うもので,大動脈弁輪の拡張もしくは上行大動脈の拡張があるものの,明らかなARが認められないか,大動脈弁の石灰化が認められない場合にも十分適応となる285),360),363).本術式は術後の抗凝固療法を必要とせず,若年者や遠隔期に追加手術が必要となり得るMarfan症候群や大動脈解離の患者にとってメリットが大きく,良好な成績が報告されている283).しかし,技術面のラーニングカーブ,術式の選択も手術成績に関連する364).現時点では遠隔成績が確立されるには至っておらず,施行にあたっては病態,執刀術者や施設の成績,患者背景,など考慮する必要がある.
次へ
Ⅴ その他 > 3 上行大動脈拡張合併弁膜症患者の手術 > 3 上行大動脈拡張(瘤)手術時の大動脈弁疾患に対する手術適応