弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Surgical and Interventional Treatment of Valvular Haert Disease( JCS 2012)
1 外科的治療からみた三尖弁閉鎖不全症(TR)の概略
 後天性TRの外科治療の対象は多くは二次性(機能性)TRと感染性心内膜炎である.前者は僧帽弁もしくは僧帽弁と大動脈弁の疾患に起因した三尖弁輪の拡大によるTRである.したがって,左心系の疾患を治療すればTRは軽快するはずであるが,なかには残存し,術後に右心不全を生ずる症例が見られるため,その治療が必要である295).また,後者は三尖弁単独の場合もあるが,僧帽弁や大動脈弁にも感染が認められる症例もある.外科治療としては形成術が第一選択であるが,人工弁置換術を余儀なくされる症例もある.

 一次性TRでは三尖弁手術によって右室の後負荷が増えるため,術前に右室機能不全がある症例では高度の低心拍出量症候群となる懸念がある.特に何らかの原因で左心不全や肺高血圧がある場合は要注意である.

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