弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Surgical and Interventional Treatment of Valvular Haert Disease( JCS 2012)
No Yes
二次性三尖弁閉鎖不全症
経過観察手術適応
1 度2 度3 度4 度
弁輪拡大
弁置換術弁輪縫縮術
3 TRの外科治療の術式とその選択
(図7)
①弁輪縫縮術(弁輪形成術)

 弁輪拡大による二次性TRに対しては弁輪形成術(annuloplasty)が行われるが,Suture AnnuloplastyとRing Annuloplastyの2種類に分類される.Suture Annuloplastyは縫合により拡大した弁輪を縫縮・形成する術式で,Kay法298)に代表されるAnnular PlicationとDe Vega法299)に代表されるSemicircular Annuloplastyが代表的である.Kay法は後尖を縫い潰して三尖弁を2尖にする術式(bicuspidization),De Vega法は後尖から前尖の弁輪を1本の糸で縫縮する術式である.ともに術式は容易で短時間で行えるが,問題点は肺高血圧が残存する症例や遠隔期に左心系の病変が悪化した症例にTRの再発が見られることである.

 一方,Ring Annuloplastyは人工リングを弁輪に縫着することにより,拡大変形した弁輪を理想的な形状に縫縮・形成するものであり300)-304),Suture Annuloplastyに比べると遠隔期のTR再発は少ない305),306).問題点としてはSuture Annuloplastyに比して時間がややかかり複合手術などで侵襲を若干上げること,感染の可能性があることが挙げられる.

 弁輪形成術の選択基準は確立されていないが,術前に肺高血圧が認められる症例ではRing Annuloplastyを選択するとする報告がある307)

②弁形成術(valvuloplasty)

 感染により破壊された弁はできれば人工弁置換術をせずに,感染部を切除した後に残存した弁葉を縫い合わせるか,または,自己心膜を補填することにより弁形成を行う307)ことができる場合がある308)

③弁置換術

 感染性心内膜炎で弁形成術が困難な症例やリウマチ性弁膜症により狭窄兼閉鎖不全の症例は人工弁置換術を余儀なくされることが多い.代用弁には機械弁と生体弁がある.三尖弁単独症例では生体弁が選択されることが多いが,左心系の弁に機械弁が使用されている症例では,最近の機械弁の抗血栓性からみて,機械弁を使用する選択もある.
図7 二次性TRに対する外科治療指針
註1: 右室機能不全がある場合,特に左心機能が術後改善の
        見込みがない場合はより慎重な適応が望ましい.
註2: 三尖弁輪の直径の正常値は32.9±3.5mm(文献296),
     弁輪拡大は胸壁心エコー上,40mm以上(文献150)
        もしくは21mm/m2以上(文献297)
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Ⅲ 三尖弁疾患 > 2 三尖弁閉鎖不全症に対する手術適応,術式とその選択 > 3 TRの外科治療の術式とその選択(図7)