弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Surgical and Interventional Treatment of Valvular Haert Disease( JCS 2012)
4 手術成績と予後
①弁輪縫縮術(弁輪形成術)

 二次性TRの実測生存率は主に左心系の疾患に依存するので本稿ではこれには言及せず,三尖弁逆流の遠隔期における制御能と再手術回避率について述べる.

1)Suture Annuloplasty
 De Vega法による遠隔期におけるTRの制御能(mild以下の逆流)は66.2%~ 92.0%と報告されている.また,再手術回避率は10年で94.9%~96.7%と報告されており,ほとんどの再手術例は術前の肺高血圧の残存や左心系の病変の悪化によるTRの増悪である309).また,我が国におけるKay法は三尖弁位の再手術回避率が10年で93.6%,17年で69.7%と報告されている310)

2)Ring Annuloplasty
 Ring Annuloplastyによる遠隔成績の報告は少ないが,一般に遠隔期におけるTRの制御能(mild以下の逆流)は比較的良好で,Suture Annuloplastyに比べると遠隔期のTR再発は少ない305),306)

②弁置換術

1)生体弁
 生体弁による三尖弁弁置換術の国内の報告では,弁関連事故回避率は10年で74.9%で,再手術回避率は10年で75.5%である311).最近では弁関連事故回避率が10年で95.2%と良好な成績が報告されるようになっている312).再手術の原因は,弁自体の破損や硬化,パンヌスの増生,感染などである.ブタ生体弁の弁機能不全は7 年目以後より着実に増加すると報告されているが,最近我が国でも使用されるようになったブタ大動脈弁を無圧固定処理した生体弁ではさらに優れた耐久性が期待されている.

2)機械弁
 機械弁(St. Jude Medical valve)による弁置換術の国内の報告では,弁freedom from valve thrombosis は10年で78.0%で,再手術回避率は10 年で83.0%である.再手術の原因としては血栓弁,パンヌスの増生などである313).最近の2 葉弁は抗血栓性に優れているので,左心系に機械弁が使用されている場合は三尖弁位も機械弁を使用することもある.
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