弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Surgical and Interventional Treatment of Valvular Haert Disease( JCS 2012)
2 術式とその選択
 ASに対する機械弁置換術は耐久性に優れ,狭小弁輪症例に対しては人工弁輪やソーイングカフのデザインを工夫することによって従来よりも1 サイズ大きい弁口が
確保できる狭小弁輪用人工弁が開発され弁輪拡大術を必要とする症例は極めて少なくなった.さらに最も一般的となってきた二葉弁の機械弁は,血行力学的にも耐久性にも優れており,再手術に使用する弁としてはスタンダードとなっている.必要とされる人工弁のサイズについては,縫着する人工弁の有効弁口面積(effective orifice area; EOA)を体表面積(body surface area; BSA)で割ったIndexed EOAが0.85 cm2/m2以上が必要と提唱された256)が, 最近ではこの0.85 cm2/m2未満のいわゆるprosthesis-patient mismatch(PPM)が必ずしも危険因子とならず,70歳以上の高齢者や,体格が比較的小さな患者では予後に関係しないとする報告が多い257)-261).最新のメタアナリシスでは0.65~ 0.85cm2/m2の中等度のPPMでも心臓関連死亡率を上昇させることが示されており議論の余地が残されている262)

*上行大動脈拡大合併症例における大動脈への同時手術の適応については,Ⅴ-3“上行大動脈瘤合併弁膜症患者の手術”の項を参照
*人工弁の選択に関しては,Ⅴ-6“生体弁の適応と選択”の項を参照
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Ⅱ 大動脈弁疾患 > 4 大動脈弁狭窄症に対する手術適応,術式とその選択 > 2 術式とその選択